2018.11.27ローストビーフの極意

キャンプでやってみたい料理の一つにローストビーフを上げる人は少なくありません。言葉通りの意味で言えば、牛をあぶり焼きもしくは蒸し焼きにした料理です。しかし日本人が想像するローストビーフは、表面に焼き色がしっかり付き、中はピンク色の物。思った通りに出来ない事が非常に多いのです。病原性大腸菌狂牛病の流行以降生で食べられなくなった牛肉をどうにか生に近い形で食べたいというのもあり、火を入れ過ぎると盛大にがっかりする料理でもあります。

肉は直径5cmの四角柱

ついつい大きな物に目が行きがちな肉選びですが、直径5cm(断面が5*5cmの正方形)程の四角柱の塊が適しています。これは理想的なピンク色のローストビーフを作る上でとても都合のいい大きさと形です。特に温度管理が難しい野外の料理では、この大きさと形をオススメします。スーパでも精肉コーナーに声を掛けておけば切り出してくれると思います。

鍋・鉄板はしっかり加熱してから

加熱開始時は、調理器具をしっかり熱した状態から始めて下さい。肉をひっくり返す際も、調理器具に余裕が有れば、より熱い場所に転がすのが正解です。冷たい鍋から始めた場合、表面が灰色になりいつまでも焦げ目がつきません。そのうち中まで火が通って仕舞います。失敗確定です。

ダッチオーブンから出すタイミングを変えてみる

ダッチオーブンでローストビーフを作ると言うのは、なんだかとってもカッコいいのですが、ダッチオーブンと言うのは蓄熱量が多いので、ついつい中まで火を通し過ぎてし仕舞いがちです。蓋をする前のダッチオーブン・厚い鉄板もしくはスキレットで表面にしっかり色目を付けたら、その後の加熱は止めて見て下さい。ダッチオーブンから肉を取り出したら、入れ違いに付け合せの野菜を投入し蓋をして調理すると良いと思います。

余熱調理と肉汁の安定

予熱と言っても、ダッチオーブン・厚い鉄板やスキレットの余熱ではありません。焦した肉表面の熱を使います。肉を動かすと少しだけ肉汁が出て来るくらいまで温まって居ればアルミ箔に包んで(寒い時期ならその上から新聞紙で包んでください)皿に置き、15分ほど休ませてください。触ってみて暖かい様なら、もう少しほおって置いて下さい。この工程で中心に向かって緩やかに加熱が進み、かつ、後半は熱で溶けた脂やゼラチン・肉汁を流れ出ない程度に固めます。この「流れ出ない程度」というのが非常に大事です。切ったそばからこれらが流れ出ると、しっとり感の無い味の薄い肉になります。

ダッチオーブン・厚い鉄板・スキレットに限定した訳

薄い鍋ですと冷たい塊肉を乗せた際一気に冷めて仕舞います。再び焦げ目がつく温度まで鍋を温めるには肉ごと温度を上げる事になり、肉の中に火が通って仕舞います。この工程を4面もしくは6面繰り返すと、恐らく皆さんの理想とするローストビーフではなくなって仕舞うのです。では、網ではどうでしょうか確かに炎の温度は高いのですが均一に焦げ目をつけるのは非常に困難です。更にススが付く関係で、焦げ目の見極めが難しくなります。そして網の上を炎を追いかけて移動するたびに肉汁が零れ落ちてしまいます。という訳で冷めにくく、焼き面を変える時以外肉に触れずに焦げ目を付けられる調理器具を挙げたのです。

見極め

皿に置いた肉がひと肌よりぬるくなったら、串を刺して見て下さい。中から汁が出て来るようなら未だ冷ましが足りません。汁が出なくなったら、俎板に出して切ります。この際欲張って厚く切ってはいけません。少なくとも最初は出来るだけ薄く切って食べて見て下さい。その後、好みの厚さを探求するのは自由ですが、恐らく薄い程美味く感じると思います。

岩塩・粒マスタード・BBQソース・山葵醤油・ハニーソース

ローストビーフは、様々なソースと相性が良いです。好きなソースを付けて食べ比べて見て下さい。数年前に流行ったローストビーフ丼というのも温かなご飯で肉の脂が融け出して一味違った味わいです。もちろんサンドウイッチにも最高です。

 

※上の文章に限りませんが、料理のレシピ本には「しっかり」とか「たっぷり」という表現があります。読み慣れないと見逃しがちなのですが、重要なポイントなのです。「さっと」ではありませんよ。「かるく」ではありませんよ。と言う意味なので、読み飛ばした人は読み返して見て下さい。

 

あとがき

この料理に関して、いろんな人が色んな事を言っています。どれも正しいやり方なのだと思います。上に書いたのは屋外でも失敗の少ないやり方のご紹介です。「上手く行ったことが無い」と言う人は、一度試して見て下さい。

このやり方で失敗した場合に考えられる原因は一つ。「肉を投入する前の調理器具の熱し方が足りなかったから」です。表面の焼き色は短時間でしっかり(ややきつめの焼き色)を目指します。

家庭用のテフロン加工のフライパンで禁止されている「空焼き」に近い温度での調理になります。この温度帯で油を鍋になじませる以上に入れると引火します。入れ過ぎない様にしてください。肉を入れた直後に炎が上がる事が有りますが、一度熱源から離せば程なく収まりますので慌てないで下さい。中まで火を通す料理と違い、調理器具は常に熱源のすぐ近くになります。タイミングが大事なので使いやすいトングと燃えにくい鍋つかみがあるとBESTです。

恐らく大半の人は2回目~3回目で思った様なローストビーフが作れるようになると思います。あとがきも最後まで読んだ人なら初回から大成功する人も居る筈です。