2018.11.24刃物のお手入れ

包丁・ナイフのお手入れの話です。

最後にも書きますが、今回ブレます。ブレブレです。それでも今書ける事を書いて置こうと思います。

洗浄・乾拭き・乾燥

「うちの包丁やペティ―ナイフはステンレスです」と言うお宅は多いと思います。菜切りや、パン切りも恐らくそうです。出刃と柳は、持って居るお宅が少ないでしょうが、コレを欲しくなる段階で、他の包丁も含めてハガネを使った包丁を一本位はお持ちだと思います。

ステンレスの包丁は、洗浄後そのままシンク下の包丁ラックに立ててもそうそう錆びません。乾拭きをしないお宅も多いでしょう。ところが、キャンプや登山で使うナイフの中には、折り畳みが多い所為も有りますが、錆びる物が多くあります。使用後は、汚れと油分を洗い流し、乾拭きが必要です。乾燥に関しては、屋外で刃を出したまま放置する訳にもゆきません。この場合、湿って居ない新聞紙にくるむ事で錆から守ってくれます。理屈は兎も角、広告でもキッチンペーパーでもなく新聞が一番です。

包丁を普段持たない人には、包丁の洗い方も大事です。包丁を洗う際には包丁は前後に動かしません。スポンジを包丁の背(峰(みね)と言います。峰打ち(ミネウチ)の峰です)から刃側に向けて一方方向に洗います。往復するようにごしごし洗うのは、どの向きで有れNGです。柄を洗う場合は、持ち手は峯側から摘まみます。刃側から摘まむとちょっとした拍子に手を切ります。峰を洗う場合は、先端だけよく気を付ければスポンジで峰を摘まんで根元から先に向けて撫でて構いません。が、刃先から根元に戻したい気持ちは抑えて下さい。この行為による怪我は、非常に多いです。

もう錆びてしまったよ。と言う場合、初期症状で有れば目の粗いスポンジや、研磨剤入りの洗剤、歯磨き粉などで落とせる事も有ります。もう少し進行すると、スチールウールや金束子になりますが、これは峰・腹限定の修復になります。刃にあてると非常に判りやすく切れ味が落ちて仕舞うからです。それ以上になったら、刃が錆びちゃったらその場合は、研ぎを行う事になります。後にも書きますが、研ぎに出すと言う選択肢もあります。

選択

読んでいてこの段階でめんどくさい人は、錆びさせない様に注意してください。また、購入をナイフ専門店、刃物屋に変えて、店主に「錆びないヤツで」と注文を付けた上で候補を選んで貰ってください。ナイフのお手入れが面倒な場合、皮の鞘もカビなどの手入れが面倒です。こちらも伝えて仕舞いましょう。またこの場合店の人はまちがいなくその道の愛好者ですので、こちらが初心者である事と想定予算を伝え、かつ長くなりそうな話は、そのつど止めて下さい。私の場合、こちらも刃物が好きなのである程度楽しめますが、それでもナイフ一本に2時間語れる知識量と愛情には精力を削られます。御徒町の有名ナイフ専門店と河童橋・川越の有名刃物店での実話です。くれぐれもご注意を。

研石の種類

研ぐ覚悟が出来た人は、まず砥石選びです。日本で包丁を研ぐために使われる砥石は、通常”水砥石”と言われる水を含ませて使う砥石です。店で”砥石”と言って出て来るものは、これがほとんどです。洋食のシェフが使って居るイメージのある棒状の”研ぎ棒”は、脂で切れ味の落ちた刃物の油落としであり、砥石としての効果はあまりありません。恐らく見覚えの無い物として、油を表面に垂らして使う”オイルストーン”は、西洋の硬い刃物や、登山ナイフなどに使います。刃物以外では工場の生産ラインのメンテナンスなどに利用する様なので、そう言った場所で毎日目にする人は居るかも知れません。

砥石の選び方

まず売っている場所ですが、刃物店(包丁屋であることが多い)には水砥石。ナイフ店には油砥石が置いてあります。両方置いて有る店もあるので聞いてみるのも良いです。包丁コーナーのあるホームセンターには、両方置いてあります。こういったお店に自分のナイフを(勿論厳重に鞘に納めて)持参し、「砥石を探しています。自分のナイフに合う物を探しているので、ナイフを見て貰えますか」と、申告したうえで鞄から出して鞘のまま見て貰ってください。この場合一般的に言われる刃物の渡し方「刃を持って柄を差し出す」では不十分です。両手のひらに乗せて、相手に取って貰う もしくは カウンターの上に置くのが最良です。手順を間違えると強盗ですから、絶対に間違えないで下さい。事前に電話で持ち込みを許可して貰ってもイイ位です。そこでまず水砥石とオイルストーンのどちらが良いか見て貰ってください。それから砥石には番手と言われるきめの細かさを示す番号が付いて居ます。最初は「仕上げ用はどれですか」と聞いて買ってください。お店に有る中で相応しい番手を選んでくれます。オイルストーンを勧められた場合、ストーンと一緒にホーニングオイルという油を買う事になります。少量で足りますので選択肢が有る場合は小さな物を選びましょう。

将来の為に流し読み

今買う必要は無いと思いますが、本格的に錆びたり、大きく欠けたナイフをメンテナンスするには、粗砥・中砥と言われる砥石が必要になります。しかしながら根気のいる研ぎ作業を粗から順に、今回紹介した仕上げ砥まで3段階も繰り返す必要が有り、和包丁の様な柔らかい金属ですら大変な忍耐が必要です。まして今回はキャンプ用。多くの物は固い金属の筈です。この場合は、ナイフの値段と研ぎの値段を比べ、更に愛着を天秤に掛けてプロに依頼するか、買い替えるかを検討するのが現実的です。プロに依頼する場合は、多少高くても刃物店かナイフ専門店に依頼するのが安全です。研ぎには得意分野が有るのです。

研ぎです

もうこの辺は文章だけでは伝えきれないので、動画サイトに丸投げです。動画サイトで抜けがちな部分だけ書きます。動画サイトを見る場合には複数のサイトを見て下さい。やり方は結構バラバラです。私なりの正解は有りますが、それが皆さんに合うかどうかは分からないのです。「切れ味が落ちない」「切れ味が良くなる」という研ぎ方が見つかるまでは、探しては試しの連続になります。研いで切れ味が落ちる?あるんですよ。結構。

砥石を安定させる

砥石と台の間に布をかます。「携帯俎板」について書いた文章にもありました。砥石も俎板同様滑ったりガタつくと手を切ります。しかも野菜を切るのとは力の掛け方が違います。切る時はザックリ切ります。救急車なのか?!というレベルに切りますよ。だからきっちり動かない様にします。

柄は角度を一定にするために持つ

利き手で柄を握り、逆の手で刃を砥石に当てて行くわけですが、刃を前後に動かすのは、刃に当てた手です。利き手はそれに合わせて前後しますが、基本的な役割は刃と砥石の角度を固定する事です。利き手でナイフを前後させると、簡単に反対の手を切ります。特にストッパーの無いタイプの折り畳みナイフは、刃が途中で畳まれて利き手も切ります。柄を持たないでほしいくらいです。

力と速度

プロの料理人の中には、力を入れ過ぎずスピーディーに研ぐ人も居ます。(残りのプロは、研いでいるように見えて研げていないか、研ごうともしないです)でもそれは何度も指を切りながら体得する事で、皆さんが真似をする必要は有りません。利き手の反対の手は刃から指が外れないように優しく添えて、ゆっくり手前から奥に砥石を撫でて下さい。奥から手前には、やらなくて結構です。一度砥石から浮かせて、手前まで持って来てからもう一度。その繰り返しです。一回のキャンプでそんなに切れ味は落ちませんので、たいして研げなくても、毎回やれば寿命を伸ばせます。その内、慣れてきますので、力とスピードの加減を変えるのであればそれからで良いです。

研ぎ終わったら

研糞(とぐそ)と言いますが、刃物を研いだ時に出る泥は、細かな金属と石です。水で洗っても簡単には落ちません。そして錆の原因です。柔らかなスポンジに洗剤を泡立てて優しく何度も撫でて下さい。折り畳みで有れば曲げる部分を特に念入りに、柄や峯側もしっかり泡を付けて、最後は水で洗い流して下さい。シンクや蛇口にも結構残りますので、水回りの清掃もセットになります。オイルストーンの場合研糞はあまり出ません。オイルも使い捨ての布や紙に吸わせて拭い取れば、シンクをほとんど汚しません。

この記事を書くにあたって

正直、悩みました。「こんな事を書かなければ、試して怪我をする人が増えなかったのに」と言う事になりかねないのです。というか試せば怪我はすると思います。

プロの現場でも、包丁研ぎを教えない所が沢山あります。怪我をさせたくないのです。

しかしながら、切れ味の落ちた刃物と言うのは同じ物を切るのに余計な力が必要で、かつ本来しなくていい包丁の動かし方を必要とします。こねくりまわすと言いましょうか、俎板の上で左右に揺らしたり、前後にギコギコしたりします。この動作は包丁を正しくキッチリ握ると出来ない為、握りが甘くなり事故を生みます。

更に、切れない刃物で切った傷は、治りが遅いのです。化膿しますし、跡も残りやすいのです。

しかし、研がなかった結果起こった怪我は、原因が分かりづらいので、けが人が増えるか、より重篤な怪我はどちらか、比べられないのです。「焚火!包丁研いだのか!」以前言われたセリフです。「指切ったじゃねえか!余計な事するな!」気を失うかと思いました。プロでもこんな人がいる位です。一般の人にはもっとわかりづらいのです。

そんな事を考えると逆に、切れる様に維持すると言う技術や知識は必要だと思うのです。知識を得たうえで個人が選べば良いと思うのです。

悩んだ結果記事にはした物の、それでスッキリしたのかと言うと、まったく心配は尽きないのです。自分のナイフをピカピカに良く切れる状態にして置く事に、喜びというかプライドと言うかそう言った物を感じる人には、是非研ぎに挑戦して貰いたのですが、ソレ以外は、無理をせず、ナイフ選び・洗浄や乾燥・錆落としをしっかりやって貰い、研ぎが必要ない様にして貰いたいと思います。

おまけ

包丁が切れると、料理の味が変わる。別に大げさでも、都市伝説でもありません。

だから焚火家の刺身は、美味いぜっ!

ま、食材が安い分どうにか美味しく食べる事に執着しているだけなのですが。