2020.05.08 キャンプが料理を上手にする

世の中に、こびりつかないお鍋が増えすぎて、火加減が下手になってしまった人を。キャンプが救うというお話。

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綺麗に焼けると盛り付けも楽しい

主にたんぱく質が焼ける際、鍋(フライパンでも網でも)にこびりつきやすい温度というのがあります。小難しいですね。

普段の料理で鍋の温度を測る人は居ないでしょうから温度は割愛しますが、料理番組やレシピ本などには、「よく熱した鍋に」という言葉が出てきます。具体的には、

強火で鍋から白い煙が出てくるまで空焼き(具も油も入れずに加熱)して(慣れるまではこの時点で一度火を止める)、家庭用のおたま一杯(80cc程度)の油を注いで鍋を傾けたり回したりして内側全体に油をなじませ(この工程を油回しと言う)、油を油回し用の油入れに戻す。改めて鍋を中火に掛ける。

ココまでをした鍋を「よく熱した鍋」と言っています。順番も大事で、油を入れた鍋を煙が立つまで温めると火柱が上がる事がしばしばです。このあと油を入れるなら・・・と油回しの油を少量残すと、これもまた塩梅がよくありません。全部油入れに戻し、新しい油を使います。

「しらねえよ!」というお言葉は、ごもっともです。しかも、こびりつかないお鍋の多くは説明書に「空焼き禁止」と書かれていて、この工程がこびりつき防止加工を著しく劣化させます。そもそもやらなくてもこびりつかないのですから、多くの方がやりません。

ハイ本題!

その一方キャンプでは、料理に力を入れ始めるとあっという間に焦げ付きやすい鍋を使う方向に憧れます。皆さん見事に憧れます。中華鍋・スキレットダッチオーブン・飯盒などです。煮物はイイんです。焦げやすいソースを使って煮込むのでなければ、焦げるのは高火力に長時間掛けただけなんですからわかりやすい。問題は焼き物です。「何度か目も当てられない失敗をして、鍋のせいにして諦めてしまった。」というのでなければ、じきに皆さん慣れてくると思います。冷たいスキレットに玉子を落とさない。網に肉を乗せてジッ!と音がしなければ、一旦肉を戻して網が温まるのを待つ。

これが「よく熱した」の状態を感覚で覚えた状態です。

これを覚えると何が変わるのか?

というと、焼き色・風味・ジューシーさです。

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茹でた薯には感じないジューシーさがこんがりハンバーグにはある

茹でたように真っ白な豚肉に、肉から出た水分で薄まった生姜焼きのタレが絡んだだけのパサパサ生姜焼きが、香ばしくジューシーなキツネ色の豚肉に生姜焼きのタレが程よく煮詰まって絡んだ生姜焼きに代わります。

焦がすのが怖くて弱火で蒸し焼きにしていたアジが、こんがりと焼き色が付き、表面に黄金の油が滲んだ塩焼きになります。

餃子も目玉焼きも片面がパリッと焼けるようになります。

いえ、今出来ているかどうかではなく、キャンプで料理をするという事が、その切符を手に入れたのと同じであると言っています。

キャンプでは火加減を家庭のように上手に調整できません

そんな中で、どうしたらいいか考えて鍋の向きや位置を変えます。実は家庭でもこれをする必要がある場面は多々あります。同じフライパンの中の目玉焼きは、フライパンの位置や角度を変えないと絶対に同時に焼きあがりません。ならば、餃子もチャーハンも同じです。これらは一度でも火を信用できない物として認識しないと気が付きません。その点、焚火や炭火は、いとも簡単に火は信用ならない物だと気づかせてくれます。

肉が焦げ付きやすい温度は、肉の厚さによらず同じです。が、厚い肉は時間をかけて焼く必要があります。そうでなければ表面だけが焦げます。(因みに、焦げと焦げ付きは、言葉は似ていますが全く別の現象です。焦げ付きは見た目を悪くする、可食部を少なくすると言った害がありますが、健康被害はありません。一方焦げは、食味を著しく損ない、健康被害も有ります。)キャンプでは表面にしっかり焼き色が付いたら、少し火から遠ざけます。

”しっかり”です。うっすらではありません。肉にしっかり焼き色が付くというのは綺麗な赤褐色になりカリッとした感触になった状態です。

家庭ならガスコンロの火を中火から弱火に向けて少し調整する事で調整できます。これが火加減です。料理人の中には、プロと素人の一番の違いは火加減の細やかさ、頻度であると断言する人も結構います。

鉄製・銅製の鍋は錆びる

鉄製・銅製の鍋は、メンテナンスをしていても、暫く利用していないと、簡単に錆びます。また表面に馴染ませた油も劣化し、人によってはアレルギーを発症します。これらを体験する事で、当初キャンプ専用に購入した鍋を、普段使いにもするようになった人も少なくないでしょう。普段使いですから、手荒に扱います。その分メンテナンス回数も増えますが、それが日常になり、より使いやすい鍋に育ちますし、扱いも上手になります。

「下手でもそれなりに出来て、毎日のちょっと憂鬱なルーチンワークでもある料理」が、「たまにであってもチョット自信をもって出せる様になり、楽しい時間」になった人もいるのではないでしょうか?

大丈夫ですよ!

まだ、そんな気分になっていない皆さん。キャンプ用品から鍋を取り出して取り合えず洗って、空焼きして、油回しをして見て下さい。油が上手く馴染んだかどうか気になって、恐らくクズ野菜や、玉子を焼いてみたくなります。どうぞ、心の赴くままにして見て下さい。使い終わったら、火傷しない温度まで冷まして、軽く洗って、空焼きして下さい。再度冷めるまで待つ間に、冷凍庫に何度焼いても上手く焼けない冷凍餃子が霜を被っているのを思い出すかもしれません。もうどうせ冷凍庫の肥やしです。焼いてしまいましょう。失敗しても何の悔いも無いでしょう。・・・そうこうする内にほら♪

「お?今夜は豪勢だね? ん?あれ?(結婚記念日・誕生日・・・・・???(;'∀'))なんか、あったっけ?」

楽しい夕食確定ですね!

 

おまけ

片面焼き目玉焼きを鉄フライパンで水を入れずに綺麗に焼く方法。

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玉子は本来常温保存が可能です

玉子を常温に戻します。調理一時間前には冷蔵庫から出しましょう。よく熱したフライパンに余分な油をキッチンペーパーで拭き取ってから、濡らした箸先をフライパンに擦り付けて見て下さい。チリチリチリと音がしたら、卵を割り入れます。割り入れたらフライパンにピッタリはまる蓋をして火を止めます。この際フライパンは未使用の五徳に移動させると尚良いです。そのまま1分待ちます。気温により変わりますが、これで概ね失敗なく白身がぷるんと白く固まり、黄身はねっとり半熟の目玉焼きが出来ると思います。お試しあれ♪

 

~編集後記~

実は我が家では、鉄製スキレットをキャンプに導入して以来、フライパンを鉄製にしました。洋食用の柄の長いフライパンです。正直安いテフロン加工フライパンが3枚買える値段でしたが、全く後悔していません。むしろ毎日が楽しい。「疲れたから、洗い物は明日にしよう・・・とか、出来ないじゃん!」と思うかもしれませんが、意外と軽微な錆びで済みます。というか、洗うのが面倒なほど汚れる事があまりありません。当初スチールウールを使用して洗っていましたが、一度使うたびに錆びて捨てることになるので、カナダワシに変えました。洗っちゃイケナイとか洗ったほうがイイとか色々な人が色々な事を言っていますが、個人的には、フライパンの寿命より食べる人の衛生面を優先したいので、洗剤も使ってガシガシ洗います。餃子を焼くのに28cm以上の直径が欲しかったため、少々重いのが難点ですが、よく考えればガスコンロの強火の炎はそれ以下の鍋には大きすぎて炎が鍋の縁から外へ逃げてしまう為、むしろ正解だったと思っています。このフライパンの購入以来、中華鍋の使用頻度も増えました。料理好きは加速しています。