2018.11.17キャンプがはじめての人を連れて(回想編)

ちょっと思い出話をしましょうか。「キャンプやってみたいんです」と言う人を連れて行くのって、気を使うんです。私の場合はそうでした。先ず自分が未だ初級者なのです。そりゃあ気を揉みます。

旅先で怪我をしたら

今なら健康保険証はカードサイズです。昔は6倍の大きさの紙を3つ折りにした物だったので、コピーを持参という学校行事でよく使われる方式で、参加者に持参して貰っていました。実際は、救急車呼ぶような物でなければ病院には行かなかったのではないかと思いますし、まずからしてキャンプ場は山の中。救急病院まで片道一時間以上なんて到底連れて行けなかったでしょう。でも、その位気を使いました。

薬袋

勿論、薬や絆創膏なんかもタップリ準備して居ました。一人暮らしをしていた私の用意した物なので、期限切れオンパレードでしたが、幸いその怪しい薬を使った人は誰も居ませんでした。絆創膏に関しては数回使いましたが、これは使う際には一枚にまでは役に立ちませんでした。水を使うシーンも多い為交換も発生しました。

食べ物の好み

2~13人を連れてのキャンプをしていたので、嗜好の把握は大変でした。普段から酒を酌み交わす間柄ばかりなので、そこそこ覚えていましたが、「みんな好きだよね。俺はいつも見てるだけで食べてないけど」なんて事が現地で発覚する事もしばしば。初めてキャンプする人に食事で寂しい思いはさせたくないと、メニュー案を見せて相談した物でした。

忘れ物対策

キャンプ参加者全員に、個人で用意する持ち物リストを渡していました。仕事仲間ですが現場が違う人も多くいたので、郵送して居ました。何度か参加している人は、経験的に荷物の増減をして来ますが、なぜか初めての人も「いや、いらないかなって」と言って荷物を減らしてくる事がありました。それは赤ペンで◎を付けても変わりませんでした。そこで、最も荷物から外されやすい物達を、こちらで準備して居ました。「下着、靴下、替えの靴代わりのサンダル、毛布、キャップ帽」もうすっかり世話焼きおばさん状態ですが、この手の勝手なやつに限って、平気で川に飛び込むし、Tシャツ短パンで来ましたので、コレらは、結構役に立ちました。

日焼け止めっていりますか

事に悩んだのは、連れの友達や、仲間の連れです。仲間の連れは、仲間に「十分な気遣いをせいよ」と言い含めるだけで良いとしても、連れの友人は、私が一緒に考えてあげる必要がありました。「俺からは言えないからね、生理用品。環境が変わるって事だからね」とか、当時まったく理解できずに答えられなかった質問が、「日焼け止めっていりますか?」でした。「ごめん。考えた事もないし、使うどころか買ったことが無い。どこで買えるかも知らない」と「連れぇwww。HELP ME!」救援を求めたのでした。

ヘッドランプ導入

女性のトイレ事情についても、考えました。今よりキャンプ場のトイレ事情は劣悪でした。いえいえ、それが標準仕様でした。昼間は、外の光を少し通して真っ暗にならないという仮設トイレ。今でも野外イベントや建築現場に有るアレですが、夜は逆に光がもれるんじゃああるまいか。まあ、その想定したのが若かりし日の私なので、アホアホなんですが。「床にランタンを置いたら、影が外に丸見えなんではないかっ!それはいかん!」と、意味の分からん事を思いつき、当時高かったヘッドライトを導入した事もありました。「重い!」の一言で、却下され、心配した事を恐る恐る話せば、眉間に皺を寄せられるしで散々な結果だったのですが、その後そのヘッドライトは、私の夜釣りの必須アイテムに転生し、活躍しました。

何でもやらせる

これが一番苦労しました。なにせ、私自身がさほどスキルを持って居ない上に、参加者の全員が私以外とキャンプしたことが無いのです。私は、自分の出来る事の全てを、次々に増える参加者に教えて行きましたが、「テントはよろしくっ!」みたいな丸投げが出来るようになるには、時間が掛かりました。ナイフと使う場面や、ナタを使う場面、火の扱いなども「これを教えて、怪我をさせたら・・・」と何度も自問自答しました。でも、じきに参加者の方から、「それ、やってみてもイイですか?」とか、「自分、ナイフ買いました!」というのが出て来て、「ああ、なんでもやりたいよね。やらせてイイんだね」と、やっと肩の荷が降りたのでした。特に薪割と、火吹き(飯盒をぶら下げるのに使っていた鉄パイプ)の人気が高く、鉈と鉄パイプは2本持つてゆく事になりました。

自由過ぎてびっくり

朝起きたら、同行者の一人がテントに居なかったことが有ります。私は眠りが浅いらしく、テントから出て行く人の気配を聞き逃したことが有りません。なので、そうとう焦りました。テントから這い出して、辺りを見ても、トイレや管理棟を見ても居ないのです。他の仲間をおこして大捜索を始めようと、テント前でわちゃわちゃしていると、「なんかあったんですか?」と、彼が車から降りて来たのです。見つからない訳です。彼が車内に居たので車の窓はすべて曇っていたのですから。なんでもトイレに起きて(この時私は、気を付けてと送り出しています)帰り際にふと、車の方が寝心地いいんじゃないかなと思って実行に移したとの事。このあと騒ぎのお詫びとして彼は全員分の缶コーヒーを買いに行き、残りのメンバーで朝食の準備をするのですが、ほっとして気が緩んだのでしょうかね、缶コーヒーを手渡す彼が「焚火さん、泣いてます?」と言い、その時初めて自分が涙を流して居る事に気が付きました。まあ、寒かっただけだと思うんですが、それほど同行者に気を使っても居たのです。

お子様連れ

これは、今思えば私自身の為にお受けすれば良かったと思います。子供を連れて行っていいか?という相談がありました。沢山の人とキャンプをしていた時期と言うのは、私自身が若干21歳~30歳までの頃です。小さな子供の相手をした経験がありません。まして何をどう気を使って良いのかさっぱりです。「それは、お父さんカッコイイっていう子供の記憶の為に、お父さんが連れて行ってあげなさい。」と、そんなような事を言って、断ったのでした。まあ、なにをどう心配したって、子供の事は親しかしてやれないんですから、余計な心配をせずに、「ちびちゃんの事は、お父さんが面倒見るんだろ?イイんじゃない?」と言えていたらと、思い出すたび思うのです。そのチャンスを逃して以来、お子様連れキャンプの機会は一度もありません。チャンスとはそういう物なのでしょうね。

私自身

私自身は、キャンプに連れて行って貰った経験がありません。厳密には小学校時代の学校行事に林間学校と言うのが有って、キャンプファイヤーと飯盒炊飯を経験している筈なのですが全く記憶に有りません。連れて行く側はさぞかし色々と気を揉み、準備に時間を割いた事だろうと思うと申し訳がない。しかしどうでしょう。「連れて行って貰ったキャンプが楽しくて」と、思えた人ならば、自分で企画して出かけたらさぞかし楽しかろうと思います。そう思うと、恐らく自分にとっての初めてのキャンプが、記憶に残らない程の物だったと言うのは勿体ないなあと思うし、それでもキャンプにたどり着いたと言うのは、ラッキーだったなあと思うのです。

楽しくて楽しくて何度もキャンプに行きました。キャンプンの翌日は、私は必ず休みを取って居ました。キャンプ仲間にはずっと内緒にしていたのですが、私は翌日もキャンプを続けていたのです。というのもテント2張り、タープ2張り、ブルーシート2枚と自分と連れのシュラフとマット、洗濯物を終えるともうぐったりだったのです。だから、アパートの駐車場にテントの一つを干して、ゆったり一人キャンプと言う名の昼寝を堪能していたのです。大家には「あんたあ、かわりもんだなあ」と言われていましたが、この時間も私のアフターキャンプの楽しみの一つだったのです。