2018.11.10キャンプの火力調整

「薪?6束あれば足りるでしょ?」

キャンプデビューや初心者ならいざ知らず、ベテランの風格を漂わせながら、薪を大量に消費するキャンパーさんは意外と多い物です。1泊23時間滞在で3食自炊の場合。竈(焚火台)1台であれば、6束は炎が大き過ぎると予想できます。卓上用などある程度小さな竈は、その大きさに比例して消費量が変わりますが、焚火台が大きくなると必要量は頭打ちになります。一体どういう事でしょう。

調理器具の底面面積

プロ・アマ・野外・屋内を問わず、鍋・鉄板の類で温める部分は底に集中して居ます。炎の出る熱源の場合、なべ底から外に逃げて目視出来る様な炎は、燃費が悪いという事です。同時に幾つもの鍋を並べるような場合でなければ、さほど大きな火は無駄が多いという事です。

網焼き・串焼きの勘違い

「炎にかざす」囲炉裏や、BBQで使われる言葉です。「かざす」とは、「その物の上または近くに近づける」という事であり、「くっつける」「差し込む」では無いのです。従って網焼き・串焼きは、一時もじっとしていない炎から、食材を上手く逃がしながら、一定の距離を保つという、大変忙しい料理と言えます。この際、竈全面に薪や炭をくべて居ては、食材の逃げ場がなくなります。横長の物であれば、利き手と反対側の隅。丸・正方形は、自分から遠い所に火を寄せ、炎との距離を調整するとスムーズに行きます。その為燃料の使用量は、半分程度にまで減らすことが出来るのです。

※卓上タイプの小型の物の場合、この手法は上手く機能しません。網や串を持ち上げて上下水平あらゆる方向に移動する事で調整するので、燃料の量はさほど減りません。持ち上げる回数があまりに多い場合に少し減らす位です。

温度の急激な変化

料理の最初から最後まで、「一気にハイカロリーで!」という料理は、意外と多くありません。それよりは、「一定の温度」でという方が重要です。まして加熱中に、「急激な温度変化を何度も繰り返す」料理、と言うのは聞いた事が有りません。対して、炎の大きさの管理は、小さすぎても、大き過ぎても難しいく温度変化を起こしやすいのです。竈の大きさや構造によって、火力を安定させやすい燃料の量というのが有ります。程よい薪の量を見極めると言うのは、面倒くさいものですが、上手くハマると快感でもあります。

鍋の種類

火力調整の難しい野外料理において、それを補ってくれる調理器具と言うのも有ります。ご存知、ダッチオーブンスキレットに代表される鋳物や厚みのある鉄板などです。厚くて重いと言うのがネックでもあり最大の武器なのです。

これらは、薄手の軽量アイテムと比べると大量の熱を溜めこんでくれます。多少凍った部分のある肉を乗せても、一気に冷める事はありません。音で表現すると「ジッ!ジャァーッ!チリチリチリッ!」です。焼き色も均一で綺麗につきます。一方薄手の軽量アイテムでは、「チィッ!ジャッ!ジブジブジブ・・・」です。焼き色は、鍋の加熱中に一番温度が高くなった部分に偏り、それ以外は蒸し焼きの様になります。均一に焼き目を付けようとすれば、パサつく事もめずらしくないのです。

※薄手の軽量アイテムの利点は、軽い・携帯収納性が高い・冷めるのが早い為撤収が迅速・鍋に余計な燃料を食われない。となりスキレットダッチオーブンには無い利点です。

薪の太さと長さ

焚火の火が安定した後は、どうしているでしょうか?追加の薪が太かったり長かったりすると、薪をくべるたびに火が不安定になる経験をした方もいるでしょう。逆に細かったり短かったりしても、くべた直後だけ炎が上がり、火持ちがせず、灰だけが増えたりします。

ある程度落ち着いたら、いったん手を開けて、試しに長さ20太さ3~5センチほどの薪を何本か作って見て下さい。イメージは「今燃えている薪を崩さずに立て掛けられる位」です。火持ちが悪いと感じれば太目に、竈のサイズがとても大きい場合は長めに調整してゆくと、火力の調整に追い回されないゆとりある焚火が出来ると思います。

焚火とキャンプファイヤー

火の調整に自信がついて来ると、「焚火」と「キャンプファイヤー」が別物に見えてきます。「キャンプファイヤーでBBQ」なんて聞くと、吹き出してしまいそうになります。これは、私の持つキャンプファイヤーのイメージが、「ゴウゴウと燃え盛る炎を、大人数で囲んで例の歌を歌う」というイメージのせいかもしれませんが、「パチっパチっという薪のはぜる音と、ゆらりと揺れる炎」これが焚火だと知れば、少なからず共感頂けると思います。その頃には、「薪は2束で充分でしょう」と言えるようになっていると思います。

炭について

今回は主に薪について語ってしまいましたが、炭は野趣こそ薪に劣るものの、調理の熱源として大変優秀です。食材の油が落ちたり、炭をいじったりしなければ、火力は極めて安定しています。ただ、炭と鍋の距離である程度解消出来るのですが、高火力が出しにくいと言えます。出るんです。でも出しにくいんです。中華鍋を盛大に振って、次から次へと料理を作りたいと言うシーンには、お勧めしにくいです。文章の前後の問題で、否定的に見えると思いますが、実は料理の熱源としてかなりオススメです。

蛇足

炭も薪も使用後は、どうしているでしょうか?残りの量が少なくなると、急激に燃えが悪くなり、どうやってもあと少しが燃やし尽くせない物です。今時は、キャンプ場に「炭捨て場」が用意されていて、そこに捨てる人が多いと思います。でも、これって次回も使える物なんです。そこで提案です。

実は、キャンプ日記の写真にひっそり写りこんでいる物が、炭・燃えさしの薪のリサイクルに一役買ってくれます。

(どれだ?と、見に行ってくれる人の為に、行間を開けます)

 

 

 

 

 

 

 

わかりましたか?

ヒント!空気を遮断すると、燃焼は止まります。燃焼が止まると、じきに発熱も止まりやがて冷めます。

 

 

 

 

いかがでしょう?

答えは、『柿の種の缶』。写真だけでなく、さりげなく文章にも書いて居たりします。今回のキャンプでは、炭と薪の燃えさしを缶に入れ蓋をしてから、洗い物(10分程度)をして帰って来た頃には、缶の底を素手で触れる温度でした。注意事項としては、缶の温度が冷めるまで決して蓋を開けないという事。それと冷めてからも密閉した車内や室内では開けない事です。

バックドラフト」という言葉を思い出して貰えば判るのですが、酸欠でくすぶっている状態(高温の一酸化炭素発生中)で、急激に酸素を与えると爆発(急激な燃焼が起き、高温の熱風)をおこします。冷めて爆発の危険が無くなってからもからも缶の中には一酸化炭素が充満して居ます。決して試さないようにして下さい。それと、注意の必要も無いでしょうが、熱いままパッキングしない事も大事です。

水に漬ける消火方法と違い、次回までそのまま保管すれば、すぐ使えます。更に、「消火用水の量が足らず大量の高温水蒸気を浴びてしまった」という事故(発生件数が多く広範囲の火傷になる為重症になる事ある事故)も防げます。