2018.10.31キャンプと放射冷却

天気と気温の関係

夏場のキャンプは、明け方暑くて目が覚めるという事がよくあります。そんな時は、「今日も良い天気だなあ。お日様元気だなあ」と感じます。湿度の高い時期にに於いては、「天気がイイ=気温が高い」という方程式は、ずばっ!とはまるのです。

ところが、紅葉の時期を境に日没~夜明けまでの時間、この方程式は360度変わります。そう!放射冷却です。大気中の水蒸気量が減り大気の保温力が落ちると、雲のカーテンの無い良く晴れた夜間には、大地と大気は放熱を続け気温が急激に下がります。

この気温差は、テント壁に結露を作ったり、時に氷結します。天気予報の最低気温は5度だったのに、朝テントが凍っていたというのもこの時期のあるあるです。また急激な温度降下は、時に体の自由を完全に奪い、ガチガチ震えるだけで、起き上がる事も出来ないという事も有るのです。

準備と心構え

脅かしたつもりではありません。来シーズンまでキャンプをするなとも言っていません。夏でも言われる防寒対策に、強化策を講じて、万全の準備と心構えで挑もう。そういう提案です。

私がキャンプを始めた当初は、まだヒートテックなんて物は存在しませんでした。ホッカイロは存在しましたが、今ほど優秀ではありませんでした。通称ラクダと呼ばれた上下のモモヒキ。通称の由来はキャメルといわれる肌色だったように記憶します。正直おじいちゃんアイテムという認識でしたが、私はこれに何度も救われています。「かっこの良し悪しは二の次」。時代が違いますが、心構えとしては、今でも変わりません。

「動きやすく暖かい下着」を用意しましょう。

今であれば薄くて軽くて動きやすい上に暖かい、さらにオシャンティーなアイテムが沢山あると思います。そちらを用意してください。「セーターだけ入れとけばイイヨネ?」という認識では、命の危険を体験する事になると思ってください。また、同じ暖かさならば「動きやすい」事も重要です。「動きやすく暖かい下着」を用意しましょう。寒いと体はただでさえ強張ります。夜中にトイレが我慢できずに遠くのトイレまで行き、やっとの思いでパンツを降ろしたが、モコモコした服が体の自由を奪い、服を汚した。という経験は、ベテランキャンパーさんの昔話としては良くある笑い話です。しかし、本題はその後、汚れた服はあっというまに体温を奪い去り、本当に「汚れたラクダでだけは、死ぬわけにはいかない」という思いをするのです。

首を守る

首というのは、体のくびれた部分です。手首足首も体温を逃しやすい部位なのです。そこで張るタイプの使い捨てカイロを使う際には、その少し心臓寄りに貼ると、効果的です。就寝前などは、低温やけどの危険が有りますので皮膚に張るタイプの物も服の上に貼り直すか、剥がした物をまとめてシュラフに持って入るとイイでしょう。また防寒用のジャケットを前後逆に着て腕を通すと、首元からの冷気を防げます。起きている時間帯であれば、首には巻くもの、脚にはレッグウォーマーなどが効果的です。防寒用ジャケットも今から購入するのであれば、袖口が二重で、内側はゴムで絞まるタイプが断然温かです。無骨で可愛くないと言うのであれば、上腕部にお気にいりのスカーフやリボンを巻くなり、単体の襟元ファーを重ねるなり、いかようにもなります。制約の中でこそ、オシャレのセンスも光ると言う物です。存分にセンスを発揮してください。

ブランケット

いっけん大した防寒にならなそうなのになぜ?とお思いかもしれません。ブランケットの特徴にそのオススメ理由があります。毛布より小さく、しなやか。勿論素材によっては、毛布と同等、もしくは逆転するのですが、比較的入手しやすいショールとブランケットの中間の様な物であれば、大きめの安全ピンか、ショールピンで簡単に肩・背中・首元の防寒をUP出来ます。あくまで主力ではなく補助です。それから、意外と冷たい椅子の座面と背中に掛けておくと、かなりの体感温度UPが見込めます。更に、シュラフの上に掛けたり、中に入れたり、お湯を入れたペットボトルを包んで湯たんぽを作ったり、勿論膝掛にも使えます。意外と使い勝手が良い控えの選手。しかも移動中は、車の背もたれに掛けておけば全くスペースを取りません。キャンプ用品の枠を超えて様々な場面で活躍してくれるのです。

床にプラス

寒い時と言うのは、地面からの冷気というか、地面に体温を吸い取られる感覚が本当に辛いものです。テントメーカーが出している専用のマットも存在します。でも専用でなくても効果はありますのでテントの内幕の床もしくはグランドシートの上に断熱性のあるものを何か引いてしまいましょう。例えば古くなった毛布・開いたダンボール、プチプチと呼ばれる緩衝剤(エアーキャップという名でホームセンターで切り売りして居ます)などが考えられます。ロールマット(アルミ・ウレタンでも)の下だけでなく、床全面に敷き詰める事で防寒効果は上がります。ベッドを使用する場合、シュラフとの間に、一枚毛布やブランケットを挟むと良いでしょう。

他にも

寒さが及ぼす影響は人体だけではありません。朝起きたら食材が凍っていた。炊事場の水が暫く出なかった。そんな事もあります。その心配が有る時期に入ったら、食材と朝食分の水はクーラボックスに仕舞います。クーラーボックスは名前からついつい誤解を受けるのですが、厳密に機能を表すならば断熱ボックスです。ですから凍結対策にも勿論役に立ってくれるわけです。使い捨てカイロも凍ります。使い捨てカイロの主成分は鉄粉・塩・パーミュキュライト・水です。水が凍結する温度0度以下では暖かくなりません。0度以下の大気中では一度暖かくなったカイロでも冷えて使用済みの様に固くなります。貼らないタイプのカイロで手を温めたい場合はポケットの中が基本になります。更に使用前カイロも服のポケットなどに入れておく必要が有ります。

車に乗れば事情は急変

さて夜が明けて撤収です。チェックアウトが比較的早いキャンプ場では、この時期、気温が低い時間帯の作業になります。多分昨夜着込んだあったか下着を着たままです。しかし車に乗ると気温は急変します。出発直前に脱いでしまいましょう。もしくは、キャンプ場から出発すれば最寄りのコンビニに取りあえず寄るでしょうから、トイレをお借りして、そこで脱いでしまいましょう。急激に寒さから解放された体は、緊張から解き放たれ眠さを誘発しますし、体温が上がればのぼせても来ます。高速道路に乗ってからでは対応が遅れますので、出来るだけ早く通常の衣服に戻してしまいましょう。寒さ対策は、解除までが一連の流れです。これで安全に帰路を辿れますし、途中どこに寄り道をしても、違和感のない服装になります。

筋肉痛と脱水 アフターケア

寒さの中、体は緊急発熱作業を行います。燃焼と言う作業を一晩中行ったのです。燃焼には水を必要としますが、就寝中は寒さも有って多くの方は何も飲んでいません。寒い夜を過ごした朝の体は間違いなく脱水状態です。タップリと水分補給をしてあげて下さい。そして発熱担当の筋肉は相当参って居ます。ビタミンの補給タンパク質の補給をして下さい。筋肉さんお疲れさまでした。

さて、ここまで読んで面倒くさくなって仕舞ったでしょうか?普段、他の事であれば、「その人のやりたいように」と考える私ですが、実際命の危険を経験してしまった事も有り、寒さ対策に関しては、「面倒くさくても万全に」と言わざるを得ません。代替案が有るとすれば、「バンガローやキャビンを使用する」・もしくは「春を楽しみに待つ」という所でしょうか。虫が減り、紅葉・夜空が美しい季節です。面倒くささを乗り越えて、万全の態勢でキャンプを楽しんでもらいたいと思います。